投稿者:   投稿日:2005/09/29(木)00時29分55秒
 ところで、漫画は著しい進歩をとげて──と書きたいところだが、
残念ながらそうは思えない。しいていえばぼくが戦後漫画の開拓を
したあとは千篇一律のごとく、ぼくの手法の踏襲でしかなかったと
思う。漫画ブームが何回か来、漫画世代が育ったが、漫画は劇画や
アンチ漫画と称するものを含め、ほとんど新しい改革はなされてい
ないのである。

 もし漫画に新革命の火の手が上がっていれば古株のぼくなどとっ
くに引退していただろうが、いまだに注文が相次ぎ、月産数百ペー
ジを書きとばし読者も支持してくれているとなると、うれしいがい
ささかさみしい気もする。いったい三十年間漫画家はなにをしてき
たのだろうか。

 武内つなよし、堀江卓、桑田次郎、田中正雄、高野よしてる、白
土三平、つげ義春、森田拳次……その他もろもろの売れっ子たちが
第一線から消え、あるいは引退し、マスコミから忘れられて行った。
そして今、書きまくっている新しい作家たちもいずれそうなる運命
だろう。それが所詮マスコミ文化の宿命であろう。だが、それは漫
画にとって悲劇だ。も一度漫画に新しい息吹きを吹き込まねばなら
ない。そして、それのできるのはぼくしかないと思っている。(略)

 ぼくは、戦後に創り出した手法は必ずヒットするだろうという自
信があったし、おそらく漫画の主流を占めるだろうと予想していた。
ぼくの手法を踏襲する投書家がきわめて多かったからである。