投稿者:   投稿日:2005/09/08(木)07時08分48秒
パパIN秋葉原  2005年08月27日 
 
夕方、
仕事のあいまに喫茶店でお茶を飲んでいると
携帯電話に、
実家から着信があった。
「もしもし」
通話ボタンを押すと、
ちいさな穴の向こうから、
母の、元気な声が聞こえてきた。
「お父さんたら、今朝ね。
仕事から帰ってきてすぐ、
一人で秋葉原まで行って、
ますみの本探してきたのよ」
「ええ、秋葉原まで?」
わたしは思わず、
大声で復唱してしまった。
父は、秋葉原など、
今までほとんど足をふみいれたことがないはずだ。
「書泉ブックタワーってところで
本を見つけたらしいんだけどね」
母は、笑いをこらえたような声で続ける。
「そこにますみの本が平積みされてて、
ポスター貼ってあるのを見たらね、
お父さん、
売り場でぽろぽろ泣いちゃったんだって」
ど、どひゃー。
あまりのことに、
わたしはすぐには声が出ない。
母はさらに続けた。
「そのあとね、記念にって、
携帯カメラで売り場の写真を撮って、
本5冊も買って、
お父さん、
汗ダラダラ流しながら帰ってきたの」
きっと、
よっぽど嬉しかったのね。
母は電話口で、
そう言ってくすりと笑った。
母の声を聞きながら
わたしも、
タクシーの仕事で徹夜明けのまま、
慣れない秋葉原の街を
うろうろと歩く父の姿を
想像してみた。
それは、
ちょっと可笑しくて、
せつなくて、
でも思わず目を細めてしまうような
ぽかぽかとあたたかい温度を持つ
父の姿だった。